コラム
【2025年版】アパート外壁のひび割れ補修を解説|管理者が知っておくべき原因・費用相場・点検タイミング

アパートの外壁に生じる「ひび割れ」は、見た目の問題にとどまらず、雨漏りや構造部の腐食、さらには資産価値の低下や入居者トラブルにも発展しかねない重大なリスクをはらんでいます。
しかし、どのような対処すべきかわからないと悩むオーナーも多いのではないでしょうか。
この記事では、管理会社・オーナーが押さえておくべきひび割れの原因、補修方法、費用相場、点検サイクルについて解説します。
【この記事でわかること】
(1)アパートの外壁ひび割れが誰が対処する?
(2)ひび割れの原因は?
(3)オーナーが取るべき行動とは?
(4)補修方法や工事費用はいくら?
国交省ガイドラインや弊社「株式会社マーク」がもつ専門家の知見も交え、外壁補修に関する最新情報を説明していきます。
外壁のひび割れは管理者・オーナーが対応すべき課題
アパートなど集合住宅の外壁に発生した「ひび割れ」は、単なる美観の問題だけではなく、建物の耐久性・安全性・資産価値にも直結する問題です。
なお、これらのリスクはアパートオーナーや管理者が対応しなければなりません。
まずは、ひび割れを放置することで発生するリスクを紹介します。
リスク1)放置は雨漏り・構造劣化・資産価値の低下につながる
外壁のひび割れを放置すると、建物の防水性が低下し、ひび割れから雨水が浸入してしまい、アパートの構造材が劣化して、資産価値が大きく下がる恐れがあります。
たとえば、ひび割れは雨水や湿気の侵入口となりやすく、内部から壁材や柱を徐々に腐食させていくことに注意が必要です。
実際に、ひび割れを放置しすぎたアパートでは、柱の腐食が進行して、数百万円規模の補強工事が必要となったケースもあります。(構造補強や外装の再工事などが必要になるため)
【株式会社マーク担当者のコメント】
単純に、ひび割れを修復するだけなら数万~20万円程度で済むことが多いです。
構造的な問題を抱えるアパートでは、入居者が減ってしまうリスクがあるため、早期発見・早期補修に取り組むことが重要です。
リスク2)ひび割れが悪化すると入居者クレームや訴訟リスクもある
外壁のひび割れを放置し、雨漏りや外観劣化が進行すると、入居者からのクレーム対応や、最悪の場合は損害賠償請求に発展するリスクもあります。
特に賃貸アパートは、住人の安全性や建物の維持責任は管理者側にあります。
雨漏りが原因で家財道具が被害を受けた場合、民法709条の不法行為責任や借家人賠償責任保険の対象となる可能性もあり、管理不備による損害賠償請求のリスクも無視できません。
(参考:e-GOV法令検索「民法|第709条」)
実際に、賃貸物件の雨漏りで賃料の減額(当事例では25%減額)が発生した判例も出ています。

ひび割れ補修は、建物保全だけでなく、入居者トラブルを未然に防ぐために重要な取り組みです。
「大丈夫だろう」と見過ごさず、軽微な状態でも早めに専門家へ相談しましょう。
【株式会社マーク担当者のコメント】
まずは建物診断を受けることで、ひび割れの状況がわかります。費用の把握にも役立つので、神奈川県にアパートを所有するオーナーはマークの無料相談をご利用ください。
アパート外壁のひび割れの主な原因とは?
外壁にひび割れが生じる原因は、複合的要因によるケースがほとんどです。
本項では、実際に多くの外壁診断・補修現場で確認される「ひび割れの主要原因」を、2つ紹介します。
原因1)経年劣化・温度変化・地震などの物理的要因
外壁のひび割れの多くは、以下のような「物理的ストレスの蓄積」が原因で発生します。
- 時間経過による劣化
- 気温・湿度の変化 など
建物は年数の経過とともに、外壁の表面や内部にさまざまなダメージを受けます。
たとえば、モルタル外壁は、乾燥収縮や熱膨張の繰り返しによってヘアクラック(髪の毛のような微細な割れ)が入りやすい構造です。四季のある日本の温度差の影響を受け、モルタルやコンクリート表面が劣化していきます。
また、地震や地盤沈下などによって建物が揺れると、構造材と仕上げ材の動きにズレが生じ、ひび割れの原因となります。自然の影響を受けてひび割れが起こるため、定期的なメンテナンスでひび割れの進行を抑えることが重要です。

【株式会社マーク担当者のコメント】
建物が地震の被害を受けると、上画像のように、大きなひび割れが起きる場合もあります。また、近づかなければ見えないひび割れができることもあるので、地震が起きた後は、その都度、建物診断を受けるのがおすすめです。
原因2)施工不良・構造上の設計ミス
意外と見落とされがちですが、外壁のひび割れには「人為的ミス」が原因となるケースもあります。たとえば、アパート建設時や補修工事の際に次のようなミスがあると、本来より早い段階でひび割れが発生しやすいです。
- 施工時の左官作業ミス
- モルタルの乾燥不良
- 目地(コーキング)の処理ミス
- 防水層の厚さ不足
また、一定の間隔で目地を入れていないなど「外壁の動きを逃がす設計」がされていないと、地震・振動の揺れを吸収しきれずに、構造的なひび割れへとつながってしまう場合もあります。
表面の補修だけでは根本解決につながらない場合も多いため、必ず建築士や外装診断士など専門家による診断が不可欠です。
ひび割れの分類と緊急度チェックリスト【幅・深さ別】
アパートの外壁に現れる「ひび割れ(クラック)」は、すべて同じレベルの劣化とは限らず、症状ごとに緊急性や対応方針が異なります。
ここでは代表的な3種類のひび割れを紹介し、それぞれ補修の必要性・推奨される対応方法をわかりやすく解説します。
軽微なヘアクラック|定期点検でOK

幅0.3mm未満の”髪の毛程度の細さ”しかないひび割れは「ヘアクラック」と呼ばれ、経年劣化や乾燥収縮によって自然に生じることが多いものです。
ヘアクラックは、コンクリートやモルタルが固化するタイミングや、ひび割れの初期段階に起こります。
なお、防水層にまで達していなければ基本的には緊急補修の必要はありません。
定期点検(3〜5年ごと)で経過観察すれば問題ないレベルです。
構造クラック|早急に補修

幅0.3mm以上、または深さが下地材におよんでいるひび割れは「構造クラック」と呼ばれ、速やかな補修が必要です。
主に、建物自体が動いたときに発生する亀裂で、構造躯体や防水層まで損傷していることがあります。
また、雨水の侵入による中性化・鉄筋腐食・外壁材の剥落といった深刻なトラブルを引き起こすリスクがあるため、補修は早期に実施することが原則です。
亀裂|構造上の問題の可能性あり

幅0.3mmを超える大きなひび割れや、複数箇所にわたって貫通するようなひび割れは、「亀裂」とされ、構造上の問題や安全性の低下につながりやすい問題です。
特に、サイディング材の目地をまたいでひび割れが連続しているケースや、外壁が浮いたように見える膨れの併発がある場合は、外壁材の支持力そのものが低下している可能性があります。
また、複数の亀裂を放置していた結果、外壁タイルの一部が落下し、住民が負傷したという重大事故も報告されています。
(国土技術政策総合研究所の「検索事故予防ナレッジベース」に登録されている落下物事故の記録は2025年で219件あり|詳細はこちら)
安全のためにも、早急に建築士・補修専門業者へ調査依頼しましょう。
【株式会社マーク担当者のコメント】
構造クラック・亀裂は早めの対処が必要です。神奈川に所有するアパートに同じようなひび割れを見つけた方は、マークの無料相談をご利用ください。
管理者がとるべきアパートのひび割れ補修の対応とは?
外壁にひび割れが見つかった際、「どのように動けばいいかわからない」と悩むアパート管理者も多いでしょう。
本項では、自己補修(DIY)の可否・業者への相談タイミング・大規模修繕との関係性を踏まえ、管理者が取るべき対応の考え方を整理します。
DIY対応・自分でやるのは基本NG|自己判断による事故リスクあり
まず、費用を抑えたいからといって、次のような道具を使って自分でひび割れ補修をするのはNGです。
- 市販の補修材
- ひび割れ補修スプレー
実際に市販されている補修スプレーやテープは、応急処置や装飾用としてつくられているため、屋外の長期使用には不向きです。
また、ひび割れ補修は、専門家による適切な処理(クラック処理、下地補修、再塗装など)を実施しなければ、補修効果は長続きしません。
「費用をかけたのに効果がなかった」「高所作業で誤って転落・ケガをした」といったリスクもあるため、管理責任の観点からもプロの調査を受けるのが最善策です。
管理会社・施工会社への早期相談が重要
ひび割れを見つけたら、まずは信頼できる管理会社や外壁補修業者へ早めに連絡を取ることが重要です。
専門業者に相談すれば、次のような方法で実施した診断をもとに、補修の緊急性・範囲・適切な工法を提案してくれます。
- 赤外線カメラ調査
- 打診調査
- 点検ドローン
不要な補修を回避しつつ、最低限の工事で劣化を止めることができるほか、ひび割れが初期のものであれば簡易補修で済む場合もあるので、まずは見積もりを取得するのが良いでしょう。
【株式会社マーク担当者のコメント】
後述で補修業者の選び方も説明しています。業者選びに迷っている方は、ぜひチェックしてみてください。
(すぐにチェックしたい方はこちらをクリック)
可能であれば大規模修繕も視野に入れる
ひび割れが複数箇所で確認されていたり、築20年以上経過している場合は、アパートの「大規模修繕」を検討するのが合理的です。
大規模修繕として、ひび割れ補修・外壁塗装・防水工事・シーリング打ち替えなどをまとめて行うほうが、足場代・人件費の観点でコスト効率が良くなるケースが多くあります。
修繕周期の観点からも、国交省の「長期修繕計画ガイドライン」では、外壁塗装・補修は12〜15年周期での実施を推奨されているため、築年数が近い(もしくは超えている)という方は、大規模修繕についても検討してみてください。
▶ 大規模修繕工事の費用感を知りたい方はこちら
▶ 大規模修繕工事の時期・タイミングを知りたい方はこちら
信頼できる外壁補修業者の選び方
外壁のひび割れ補修は、建物の寿命や資産価値に直結する重要な工事であるため、「信頼できる補修業者選び」が欠かせません。
ここでは、補修業者を選定する際に必ず確認しておきたい3つポイントを紹介します。
選び方1)実績豊富で「アパート補修」に強い業者を選ぶ
アパートの外壁にできたひび割れの補修は、戸建てや商業施設とは異なる専門的なノウハウが求められます。そのため、アパート補修に強い次の業者に相談しましょう。
- 所有するアパートのエリアに精通した業者である
→ 地域事情に詳しいため配慮面に強い - ひび割れ補修や大規模修繕の実績が豊富である
→ 実績が多いほうが段取りをスムーズに進めてくれやする
上記に充てはまる業者は、段取り・近隣対応・日程調整などの“現場マネジメント”に長けており、工期遅延やクレームを最小限に抑えられます。
可能なら、過去の施工事例をチェックするのもおすすめです。
【株式会社マーク担当者のコメント】
逆に「実績情報がまったく出てこない」「口コミ評判が悪い」といった業者は、依頼したあとで費用やサポート面に後悔することがあるので避けておくのが良いでしょう。
選び方2)建築士や外装劣化診断士が関与する業者を選ぶ
ひび割れ補修や大規模修繕の点検・調査について、目視だけで補修内容を判断する業者には注意しましょう。
また、業者を比較する際には「誰が診断しているか」までチェックすることが重要です。たとえば、次のようなスタッフが対応してくれる補修業者は信頼できます。
- 建築士
- 外装劣化診断士
「補修の提案」の信頼性は“誰が調査したか”で大きく変わります。公式サイトの情報や問い合わせを利用して、建築士・診断士の関与を事前に確認しましょう。
選び方3)見積もりの内訳が明確で、保証制度がある業者を選ぶ
補修業者は、見積もり価格の安さだけで選ぶと後悔するケースが少なくありません。
たとえば、補修業者のなかには「一式いくら」「補修工事一式」「材料費込み」といった不透明な見積もりを出してくる業者も多く、あとから追加料金が発生することがあります。
また、安い代わりに、完工後の保証書やアフター点検制度がないといった業者もいるため、見積書・契約書の明瞭性、保証制度の有無を必ずチェックしましょう。
あわせて神奈川エリアで大規模修繕が得意な業者をお探しなら、以下の記事もチェックしてみてください。
▶ 神奈川エリアの大規模修繕業者(ひび割れ補修もOK)はこちら
モルタル・サイディング外壁別|補修方法と費用相場
外壁のひび割れ補修は、外壁の種類によって、最適な補修方法や使用する資材、費用が異なります。
特にアパートに広く採用されているのは「モルタル外壁」と「窯業系サイディング外壁」の2種類です。それぞれの劣化症状と補修アプローチには明確な違いがあるため、以下にそれぞれの補修ポイントと費用相場を整理しました。
項目 | モルタル外壁 | 窯業系サイディング外壁 |
---|---|---|
主な劣化症状 | ひび割れ、チョーキング、浮き・剥がれ | 目地コーキングの劣化、反り、色あせ、ひび割れ |
補修方法 | ひび割れ補修(Uカット+充填工)、浮き補修、全面塗装 | コーキング打ち替え、ひび割れ補修、張り替え、塗装 |
補修単価の目安(※) | ・ひび割れ補修:2,000~4,000円/m ・塗装(3回塗り):3,000~4,500円/m² | ・コーキング打ち替え:900~1,200円/m ・塗装:2,500~4,000円/m² |
耐用年数の目安 | 約10〜15年(塗膜)、ひび割れ補修は都度必要 | 約10〜15年(コーキング・塗膜)、反り・張替えは20年〜 |
補修時の注意点 | 素地調整や下地処理が重要。塗装前にひび割れ処理必須。 | 目地処理が命。誤った材質のシーリング材で再劣化リスクあり |
よくある補修工事費例(30坪規模) | ひび割れ補修+全面塗装:80〜120万円程度 | コーキング打ち替え+塗装:90〜130万円程度 |
あくまで目安ですが、対策や費用に少しずつ違いがあります。
また、外壁サイディングのひび割れについて、原因や補修方法を詳しく知りたい方は、以下の記事がおすすめです。
外壁コーキングによる補修方法と注意点
前述したアパートの外壁のなかでも、サイディング外壁では「目地部分」「ひび割れ部分」をコーキング材で補修するのが一般的です。
【株式会社マーク担当者のコメント】
コーキングとは、ゴム状の防水シール材で、目地の防水性や伸縮性を保つ役割があります。劣化した目地やひび割れ部にコーキングを充填することで、水の侵入を防ぎ、外壁の健全性を維持できます。
また、コーキングを行う際には、既存のコーキングの上から重ね塗りする「増し打ち」ではなく、古いコーキングを剥がして新しいものに打ち替える「打ち替え工法」をすることが大切です。
補修業者と話し合いながら、所有するアパートに最適な補修方法を選定していきましょう。
補修工事に活用できる保険・補助制度
ひび割れ補修やアパートの大規模修繕は、保険や補助制度をうまく活用することで、自己負担を抑えて計画的に補修を進めることが可能です。
たとえば、火災保険では次の要因で発生したひび割れが認定対象になる場合があります。
- 風災
- 雪災
- 地震(地震保険付き)
また、地震による構造クラックや、台風時に外壁が損傷した場合には、保険金請求の対象になる可能性もあるので、加入保険の補償範囲を確認しましょう。
加えて、自治体によってはアパートの補修などに対して、補助金を提供しているケースも少なくありません。神奈川エリアの補助金を知りたい方は、以下の記事をチェックしてみてください。
▶ 神奈川県の大規模修繕(ひび割れ補修含む)に使える補助金はこちら
よくある質問【FAQ】
ひび割れの点検・補修は何年ごとに必要?
アパートの外壁は、少なくとも5年ごとに専門点検を実施するのが望ましいとされています。塗装後であっても、ひび割れ・チョーキング・浮きなどの劣化は徐々に進行するため、定期点検および都度補修が資産価値維持に欠かせません。
入居者から補修要望があった場合どう対応すべき?
入居者から外壁ひび割れなどの連絡があった場合には、即日対応の意思表示と現地確認の段取りをとりましょう。対応が遅れると、雨漏り・クレーム・信頼低下などにつながります。第三者業者の診断書を取ると、判断根拠としても安心です。
補修後に雨漏りした場合の保証は?
保証内容は施工業者の契約条件によって異なりますが、通常は5〜10年の瑕疵保証が設定されることが多いです。保証対象となるのは構造的な補修や防水施工で、コーキング補修単体では保証対象外の場合もあるため、事前確認が必要です。
外壁のひび割れ補修は火災保険や地震保険でカバーされる?
自然災害が原因のひび割れであれば、火災保険(風災・雪災・雹災)や地震保険で補償される可能性があります。ただし、経年劣化や施工不良によるひび割れは対象外です。まずは保険会社か代理店に写真付きで相談すると良いでしょう。
外壁補修後の保証年数やアフター対応はどの程度あるのか?
保証年数は工事の内容と業者の保証体制により異なりますが、一般的には3〜10年が多いです。施工業者を選ぶ際は、アフター点検や連絡体制が整っているかどうかも確認しましょう。保証書の発行有無もチェックすべき重要ポイントです。
アパートの資産価値を維持するために|定期点検と予防補修の重要性
アパートの外壁にできるひび割れは、定期的に進行状況を確認し、ベストなタイミングで補修を行うことが重要です。
早めに補修を実施することで、アパートの構造を長持ちさせられるのはもちろん、資産価値が維持されて、入居希望者数の維持(退去者の減少)につながります。
【株式会社マークからのご案内】
株式会社マークでは、アパートを対象に無料の外壁診断・複数プランの見積もり提案を行っています。神奈川エリアで実績多数、しつこい営業も一切なし。まずはお気軽にご相談ください。
監修・執筆|この記事は株式会社マークの編集チームにて作成しております。なお掲載している国・国土技術政策総合研究所等の情報は最新情報にもとづき適切に編集を実施しています。