コラム
【2025年】2回目以降の大規模修繕は費用・トラブルに注意!回数ごとの違いや成功のコツをプロが解説|アパート・マンション

大規模修繕工事は、アパートやマンションの資産価値を維持する重要な工事です。そのなかでも2回目以降の修繕は、1回目よりも建物の劣化が進行し「費用が高くなる」「トラブルが発生しやすくなる」といった問題が起こる可能性があります。
この記事では、国土交通省の実態調査やガイドラインなどの一次情報をもとに、2回目以降の大規模修繕に関する費用相場や注意点、失敗を避ける計画の立て方を解説します。
1回目の修繕を終えて、2回目以降の計画を立てようとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事でわかること】
(1)2回目の大規模修繕が重要な理由
(2)2回目の費用相場・工事内容の目安
(3)修繕工事費用を抑える方法
(4)2回目以降の大規模修繕で起こりやすいトラブル例
この記事は、神奈川の大規模修繕工事会社「株式会社マーク」の知見も交え、2025年最新の情報を説明していきます。
大規模修繕が「2回目」こそ重要な理由とは?
2回目の大規模修繕は、築20年〜30年の劣化が進んだ状態で行う「本格的な再生工事」が必要です。設備などの交換や、規模の大きな修繕も発生しやすいため、管理組合やオーナーにとって失敗が許されない局面となります。
ここでは、2回目の大規模修繕がなぜ1回目よりも難しく、計画性が求められるのかについてわかりやすく解説します。
2回目は1回目と比べて難易度が上がる
まず、1回目の大規模修繕は新築から12〜15年程度で実施されることが多いため、劣化の進行が少なく、表層的な補修(外壁塗装、防水など)が中心です。
▶ 大規模修繕は約12~15年に1回ペースが平均|詳しくはこちら
一方で2回目の大規模修繕では、給排水設備や構造部の老朽化が進み、「計画外の修繕」や「目に見えない劣化部分」の対応も必要となります。さらには住民構成の変化(新たな入居など)や、管理組合が高齢化することによって、意思決定が難航するかもしれません。
1回目と2回目の大規模修繕 比較目安表
比較項目 | 1回目の修繕 | 2回目の修繕 |
---|---|---|
実施時期 | 築12〜15年 | 築20〜30年 |
工事項目 | 外壁・防水など表層中心 | 給排水・下地補修など構造対応 |
費用目安 | 80〜110万円/戸 | 100〜150万円/戸 |
管理体制 | 若い管理組合が多い | 高齢化・意思決定の難しさあり |
トラブル発生率 | 比較的少ない | 増加傾向にあり (追加工事など) |
このような理由から、1回目よりも古くなったアパート・マンションの大規模修繕工事は、難易度が上がりやすいです。十分に準備したうえで取り組む必要があります。
【株式会社マーク担当者のコメント】
国土交通省の「マンション大規模修繕工事に関する実態調査(令和3年度)」によると、1回目と比べて2回目の工事費のほうが高額になりやすいことがわかっています。
6,000万円以下が最大の1回目に比べ、2回目は8,000万円以下が最大になり、1回目の30%増が平均だと言われています。(例:1回目100万円なら2回目130万円)
※金額は規模の大きなマンションであるため、あくまで目安です。

施工内容が1回目と異なるポイントとは?
2回目の大規模修繕では、1回目と比べて施工対象の範囲や内容が大きく変化します。
まず1回目の修繕工事では、次のように建物の外観などが中心です。
- 外壁塗装(再塗装中心)
- 防水工事(屋上・バルコニー)
- シーリング補修
- 鉄部塗装
対して2回目は、1回目と同様の工事に加えて、次のように見えない劣化箇所も視野に入れた総合的な施工計画が必要です。
- 外壁下地補修(ひび割れ・浮き)
- 給排水管更生・更新
- シーリング全面打ち替え
- バリアフリー化対応(手すりなど)
- エレベーター更新・省エネ照明設置
「どこを修繕すべきか」を技術者と連携しながら精査することが、費用対効果を高めるカギとなります。
アパート・マンションでの大規模修繕の違い
あわせて把握しておきたいのが、アパートとマンションでは、大規模修繕の内容や計画の進め方、費用感にいくつか違いがあることです。
比較項目 | マンション | アパート |
---|---|---|
所有形態 | 区分所有(複数) | 一棟所有(単独) |
意思決定 | 管理組合・総会で合意 | オーナーが単独判断 |
資金計画 | 修繕積立金が基本 | 自己資金または融資 |
工事項目 | 外壁・共用部・設備 | 外壁・屋根・鉄部などが中心 |
工事スケジュール | 調整に時間を要する | 比較的早期に着手できる |
まずマンションは区分所有であるため、管理組合が存在し、長期修繕計画や修繕積立金制度が整備されているケースが一般的です。修繕にあたっては、総会での決議や合意形成が必要となり、時間をかけた合意と調整が求められます。
一方で、アパートの多くは一棟所有のケースが多く、オーナー単独で意思決定ができるため、判断が早く、外部業者との交渉や見積取得もスムーズに行えます。ただしその分、費用をすべてオーナーが負担するリスクがあるため、資金計画の綿密さがより重要です。
大規模修繕2回目の費用相場と工事内容
2回目の大規模修繕では、1回目と比べて施工範囲が広がることから、費用が増加する傾向があります。
場合によっては修繕積立金でまかなえないケースもあり、資金計画の再構築が求められる場面も少なくありません。
ここでは、戸数・築年数ごとの費用相場や、2回目に必要な工事項目の実態を詳しく見ていきます。
戸数・築年数別|大規模修繕の目安費用一覧
国土交通省が公開している「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」では、建物の構造・戸数・築年数で次のように費用が変化すると言われています。
木造10戸 (1K) | RC造10戸 (1K) | 木造10戸 (1LDK~2LDK) | RC造20戸 (1LDK~2LDK) | |
---|---|---|---|---|
5~10年目 | 約7万円/戸 (合計70万円) | 約7万円/戸 (合計70万円) | 約9万円/戸 (合計90万円) | 約9万円/戸 (合計90万円) |
11~15年目 (1回目のタイミング) | 約52万円/戸 (合計520万円) | 約46万円/戸 (合計460万円) | 約64万円/戸 (合計640万円) | 約55万円/戸 (合計550万円) |
16~20年目 | 約18万円/戸 (合計180万円) | 約18万円/戸 (合計180万円) | 約23万円/戸 (合計230万円) | 約23万円/戸 (合計460万円) |
21~25年目 | 約80万円/戸 (合計800万円) | 約90万円/戸 (合計900万円) | 約98万円/戸 (合計980万円) | 約116万円/戸 (合計2,320万円) |
26~30年目 (2回目のタイミング) | 約18万円/戸 (合計180万円) | 約18万円/戸 (合計180万円) | 約23万円/戸 (合計230万円) | 約23万円/戸 (合計460万円) |
合計 | 約174万円/戸 (合計1,740万円) | 約177万円/戸 (合計1,770万円) | 約216万円/戸 (合計2,160万円) | 約225万円/戸 (合計4,490万円) |
上記はあくまで目安ですが、建物の規模が大きくなるほど、費用が増加する傾向にあります。また、設備などが充実した建物の場合には、いずれ一斉取り替えが発生する点に注意しましょう。
【株式会社マーク担当者のコメント】
2回目の修繕では、高所作業による「足場費用」「防水改修」など“必須工事”が増えるため、想定より費用が2〜3割高くなることは珍しくありません。特に中規模以上の物件では、給排水管や電気設備の更新も絡むため、事前に詳細な診断と見積もり取得が重要です。
1回目よりも20〜30%費用が増える理由
2回目の大規模修繕は、次のような理由から、1回目に比べて費用が20〜30%ほど増加するケースが一般的です。
費用が増える主な6つの要因
- 構造部の劣化が進行している
- 給排水設備・電気配線などのインフラ更新が必要になる
- 仮設・足場費用の増加する
- 人件費・材料費が近年高騰している
- 施工範囲が広がる
- 追加工事のリスクが高い
3回目は2回目よりもさらに高くなる場合がある
3回目の大規模修繕は、2回目よりもさらに費用が高くなる傾向があります。これは、建物の老朽化が進み、設備の全面交換や構造補強など、大掛かりな工事が必要になるためです。
3回目の修繕では、築30〜40年を超える物件が対象となるため、長期修繕計画を修繕するたびに見直すことが重要です。
※国土交通省のガイドラインでは、5年ごとに修繕診断を実施してその都度、見直すのが良いとあります。(参考:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)
【株式会社マーク担当者のコメント】
特に最近では、物価の高騰や増税などの影響を受けて、施工業者全体の見積金額が増加傾向にあります。業者の比較検討を実施して、費用負担を抑えやすい業者を探しましょう。
費用を抑える4つの対策|払えない時の解決策
2回目の大規模修繕は、施工範囲や内容の拡大により、想定以上の費用が発生するケースが少なくありません。
そのため、なかには「修繕積立金では足りない」「追加徴収に住民が反対する」など、資金的な問題で着工できない事例もあります。
よって、修繕費を抑えるためにできる4つの具体的な対策を紹介します。オーナーや管理組合の立場に関わらず、今すぐ実践できる方法です。
【対策1】管理会社ではなく自分で施工会社を比較する
2回目の大規模修繕は費用が高くなりやすいため、管理会社任せにせず、自ら複数の施工会社に見積もりを依頼するのが効果的です。
中間マージンのない直契約により費用が抑えられるほか、提案の幅も広がります。施工会社の選定は慎重に行いましょう。
【対策2】助成金・補助金を活用する
国や自治体によっては、大規模修繕に使える補助金・助成金制度が用意されています。
条件や申請時期に注意が必要ですが、活用できれば費用負担を大きく軽減できます。まずはお住まいの自治体制度を確認してみましょう。
▶ 神奈川の大規模修繕に使える助成金・補助金はこちら【2025最新】
【対策3】修繕積立金の見直しと資金計画の立て直し
修繕積立金が不足している場合には、段階的な値上げや借入などの資金計画を検討しましょう。
長期修繕計画と照らし合わせて再計算することで、次回以降の工事にも備えられます。早めの見直しが、急な負担増加を防ぎます。
※積立金が不足しているケースでは、見直しと同時に住宅金融支援機構などのローン活用も検討が必要です。(例:管理組合のための大規模修繕ローン)
【対策4】アフターサービスや保証制度を利用する
施工後のトラブルを減らすために、アフターサービスや長期保証制度の内容を事前に確認しましょう。
少し費用が上がっても、再修繕リスクを避けられるので、長期的に見るとコストメリットがあります。契約時に明記が必要です。
【株式会社マーク担当者のコメント】
大規模修繕のなかでも「外壁塗装にかけるお金がない」とお悩みの方は、以下の記事でより詳しい対策を解説しています。概要だけではなく、具体的な中身を知りたい方は、ぜひチェックしてみてください。
2回目以降の大規模修繕でよくあるトラブルと対処法
2回目以降の大規模修繕は、1回目の経験がある分「スムーズにいくだろう」と思われがちですが、実際には新たな課題やトラブルが発生しやすくなります。
これは、過去の工事内容や管理体制の変化によって、1回目とは異なる注意点が増えるためです。
参考として、よくある3つのトラブル事例とその対処法を紹介します。
【トラブル1】追加費用が発生しやすい
2回目の修繕では、見積もり段階で予測できなかった、次のような劣化や構造的な問題により、追加費用が発生しやすい傾向があります。
- 1回目より築年数が経過しており、内部劣化が進行している
- 設計変更や補強工事が必要になるケースが多い
- 材料費や人件費の高騰による見積もり差異も大きくなる
予算オーバーを避けるためにも、着工前に詳細な劣化診断を行い、予備費を予算に含めて、突発的な追加費用への備えましょう。
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(神奈川エリア対応)
【トラブル2】管理会社任せで不要な工事が増える
2回目の大規模修繕を、管理会社にすべてを任せてしまうと、必要以上の工事や高額な仕様が組み込まれるリスクがあります。
- 利益相反構造(元請けと管理会社が同一)になりやすい
- 他社との比較が行われないため価格が不透明
- 専門的な説明を受けずに工事内容を決定しがち
可能であれば、見積もりを自分で複数社で取り、工事監理は第三者機関に依頼して、客観的な判断と費用の妥当性を確保しましょう。
【株式会社マーク担当者のコメント】
業界内の話ですが、不要なバルコニー改修工事が追加されるなどして、数十~数百万円近いコストが余計にかかった事例もあるようです。
【トラブル3】情報共有不足で住民トラブルに
2回目の工事では建物全体を防音・防塵のシートを覆うケースが多いため、工事中の騒音や日照制限などの影響を事前に伝えないと、住民からのクレームやトラブルにつながる可能性があります。
特に次のような場合には、クレームを受けやすくなります。
- 工期や影響範囲の説明会が開催されない
- 掲示物やお知らせの頻度が不十分
- 高齢者やテレワーク住民への配慮が不足しがち
トラブルを回避するためにも、着工前には説明会を実施し、掲示物や配布資料で定期的に情報共有することが、住民満足度と円滑な工事進行につながります。
【株式会社マーク担当者のコメント】
工事中の洗濯物トラブルをめぐって住民同士の対立が深刻化し、管理組合へのクレームが殺到したという事例もあるようです。
具体的なトラブル事例・対策を知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。
2回目以降の大規模修繕を成功させる計画の立て方
大規模修繕工事は、計画の立て方次第で、費用・トラブル・住民対応すべてが大きく変わるため、1回目の経験があったとしても、2回目以降の大規模修繕を軽視するのは危険です。
ここでは、成功につながる2つの要素として「施工会社の選び方」「工事前のチェック体制」について解説します。
優良な施工会社を選ぶ
大規模修繕の成否は、どの施工会社に依頼するかで大きく左右されます。
比較検討すべき理由
- 管理会社任せでは相見積もりが取れず、価格競争が起きにくい
(任せっぱなしだと、高品質かつ低価格な業者を見つけられない) - 専門性の高い会社なら、構造・設備まで含めた適正な工事提案が可能
(建物の劣化進行を抑えられる) - アフターサービスや保証体制も会社ごとに差がある
(安心感が違う)
安心して利用できる施工業者を見つけるためにも、最低3社から見積もりを取り、工事実績・提案内容・保証内容などを総合的に判断しましょう。
【株式会社マーク担当者のコメント】
比較・選定を行い、施工実績が豊富な会社に依頼したところ、約15%のコスト削減と工期短縮を実現した事例もあります。
※数値はあくまで傾向です
施工後のトラブルを防ぐチェックリスト
工事の不備や住民トラブルを未然に防ぐためには、計画段階でのチェック体制が重要です。
実際、チェック項目を事前に整理しておいた管理組合・オーナーが、塗装の色味や足場配置に関する住民からの苦情がゼロだったという報告もあります。
「説明会の実施」「劣化診断の写真記録」「契約前の仕様書確認」など、段階ごとにチェックリストを活用することで、想定外の問題を最小限に抑えられます。
▶ 印刷して使える|マークオリジナルのチェックリストをダウンロード(PDF)
2回目以降の大規模修繕でよくある質問【FAQ】
大規模修繕は何年ごとにやるべき?
大規模修繕は、目安として12~15年ごとに行うのが一般的です。ただし、建物の劣化状況や過去の修繕内容によって時期は変わります。特に2回目以降は修繕箇所が多岐にわたるため、劣化診断を基にタイミングを判断することが重要です。
2回目の大規模修繕は築何年目にやるべき?
多くの場合、1回目を築12〜15年目に実施するため、2回目はその12〜15年後、すなわち築24〜30年目に行うのが目安です。外壁や防水、配管の老朽化が進んでいるため、1回目より慎重な計画が必要になります。診断結果をもとに検討しましょう。
修繕積立金で足りない場合はどうすべき?
修繕積立金が不足している場合は、まず金融機関からの借入や一時金の徴収が検討されます。急な負担増を防ぐには、事前に資金シミュレーションを行い、助成金・補助金の活用も視野に入れましょう。無理のない返済計画が鍵になります。
※国交省の資料によると、修繕積立金は「長期修繕計画における計画期間の推定修繕工事費の累計額を計画期間(月数)で除し、各住戸の負担割合を乗じて、月当たり戸当たりの修繕積立金の額を算定するのが良い」と説明されています。(参考:国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン」)
2回目以降の大規模修繕は管理会社に任せて大丈夫?
管理会社に一任すると、不要な工事や高額契約につながるリスクもあります。中立的な第三者(設計事務所・コンサル)を介した相見積もりや工程監理を取り入れることで、透明性と品質を確保できます。丸投げせず、主体的な管理が重要です。
大規模修繕の2回目は準備・計画が鍵!
2回目以降の大規模修繕は、建物の老朽化が進み、工事費用の増加やトラブルのリスクが高まるため、1回目以上に慎重な準備と明確な意思決定が求められます。
とはいえ、次の要素をすべて一人で進めるのは容易ではありません。
- 中長期修繕計画の見直し
- 適正価格で信頼できる施工会社の選定
- 補助金・積立金の活用による資金対策
- 居住者との円滑な合意形成
そのため「うちもそろそろ2回目だけど、何から始めれば…?」と感じたら、大規模修繕のプロである「マーク」にお気軽にご相談ください。
【株式会社マークからのご案内】
株式会社マークでは、アパートを対象に無料の外壁診断・複数プランの見積もり提案を行っています。神奈川エリアで実績多数、しつこい営業も一切なし。まずはお気軽にご相談ください。
監修・執筆|この記事は株式会社マークの編集チームにて作成しております。なお掲載している国・自治体などの情報は最新情報にもとづき適切に編集を実施しています。